前回までのあらすじ
偶然、法然寺境内にて大堰川事件の慰霊碑を発見した我々は、大堰川事件について調査を始めた。
手始めに亀岡文化資料館で資料をあさってみたところ、以下の資料を発見。
大堰川の護岸工事のトラブルで死者が出たということまでは分かった。
しかしそれ以上、亀岡文化資料館で調べることは難しいと判断した我々は……。
前回の記事はこちら
京都府立図書館へ
過去の事件に関してはやはり新聞をあたるのが一番。といっても大堰川事件の慰霊碑に刻まれた日付は「大正十四年二月二十三日」
大正十四年と言えば西暦に直すと1925年。今から90年以上も前の話なので、簡単には新聞も見つからない。
こうした過去の新聞を調べるには図書館が一番。
亀岡を本拠地にしている我々は、なるべく手近なところで済ませようと、
亀岡市立図書館に新聞が保存してないかどうか確認するも、予想通りそんな古い新聞は置いていないとのこと。
京都府立図書館に行けば明治以降の新聞はほぼそろっているとの助言を受けるが、
府立図書館って遠い……。
亀岡からおよそ一時間かかる。
……邪魔くさいなぁ大堰川事件のためならそれぐらい問題なし!
貴重な休みを利用して府立図書館へ訪れることに決定。
まあ、近くには平安神宮とか、美術館もあるんで観光ついでに寄っていけばいいか。
到着!
というわけで、府立図書館に到着。
ちなみに府立図書館には駐車場がないので近くのみやこめっせ駐車場を利用。利用料金は以下。
平日<月~土>:
●最初の1時間500円、以降30分毎に200円
●平日最大1,500円
※土曜日が祝日にあたる場合は日祝料金になります。
日祝:
●最初の1時間500円、以降30分毎に200円
※みやこめっせ公式hpより※
地下の駐車場に車を止める。わがサイトのかめじ~ん調査員は給料日前で金欠のため駐車料金を安く済ませようとかなり速足で歩いていくためついていくのがやっと。
地上ではどこかの企業説明会でもあるのかリクルートスーツに身を包んだ若者たちが群れをなして歩いていた。将来の社畜どもめっ!となぜか蔑んだ視線を投げかけるかめじ~ん調査員を尻目に図書館へ向かう。
なお館内は写真撮影禁止なので、ここからは館内の写真はないぞ!
調査開始
目的は大堰川事件の新聞記事を見つけること。
館内の案内図で二階で新聞の閲覧ができるということを確認後、階段を上り、カウンターへ向かう。
図書館員の方に、大正十四年ごろの新聞を読みたいと告げる。
が、我々はここで想定外の説明を受けることに。
新聞が保存されているといってもデータベース化されているものだと思っていたのだ。それならパソコン上でキーワードを検索すれば、たちどころにその記事を見つけることができるので、大堰川事件の記事を調べるのにそれほど時間はかからないはず。
そんな調査の仕方を想定して図書館を訪れたのだが……。
しかし、我々が目当ての新聞――大正十四年ごろの京都新聞――はデータベース化されていなかった。つまりは、パソコンで検索するなど不可能!
当時の新聞をしらみつぶしに我々の目で一つ一つ記事を探していくしかない。
もらった資料によると、全国版ならばデータベース化されているが、地方版や京都新聞のような地方紙はさすがにデータベース化されていない。
ただ不幸中の幸いだったのが、マイクロフィルム化はされているので、紙の紙面で一つずつ探していく必要はなく専用の閲覧用機械で見ていくことができるということだ。
マイクロフィルムというのがどんなものなのかは知らないが、とりあえずはそれで探すしかないだろう。
しかしまずは何年の何月何日の新聞を調べればいいのかははっきりとしない。慰霊碑の日付は「大正十四年二月二十三日」
事件が起こってすぐに慰霊碑は建てられないだろうから、事件自体は数か月前に起こったことに違いないと予想を立て、
まずは大正十三年の新聞を用意してもらい、それを虱潰しに調べていくことにした!
一年間の新聞となるとそれなりの量がある。
福井県立若狭図書学習センターHPより
上記のような機械に、マイクロフィルム化された新聞をセットして大堰川事件の記事がないか調べていく。
現在と違って、一日の新聞の量はせいぜい5,6ページなのですぐに読み終わるが、毎日、それも朝刊と夕刊をすべてチェックするとなると相当な量の時間がかかる……。
今回図書館を訪れた調査員は2名。この2名が2台の機械を占領してせっせと調べていく。
が、思ったより時間がかかる。量が多いというのはもちろんのこと、大正14年なので文言が古い。旧字旧仮名遣いなので読みづらいので脳みそがその字を認識するのに時間がかかる。
そしてさらに大きな障害が一つ。
……記事が面白いのだ!
「挨拶の代わりにブン殴られた」
二、三言葉を交わすなり木箱の蓋でもって殴打。目下取り調べ中。
おもろいやないか。ほんとに挨拶の代わりや。二人の間に何があったのかすごい気になる……。
「好い後は悪い 馬鹿散財の果」
事件自体は他愛もない。集金の金を横領してその金で遊びまわっていただけだが、「馬鹿散財」って。
このころの記事はストレートな表現使うんだな。
他にも狂人の国とかいう連載物があったり、興味深い見出しを見るたびについついじっくりと読んでしまう……。
これでは時間がいくらあっても足りない。
結局二人で一時間かけて二か月分しか調べることができず。これでは一年分調べるのに六時間かかる。これは無理や。
しかも、このマイクロフィルムの閲覧機械は三台しかなく、一人二時間までという制約がある。こういう日に限って利用者が多いので、すでに機械は利用者でいっぱい。
新しい利用者が来たら交代してくださいと係員からもお願いされた。これは時間内に調べるのは不可能だと判断した我々は、大堰川事件が起きた日時を特定しなければならぬと、調査方針を変更することに決定。
蔵書を探せ!
せっかく府立図書館という本の山に囲まれた場所に来ているのだ。この建物のどこかに大堰川事件について書かれた本があるに違いない。それを利用しない手はない。
まずは図書館のパソコンを利用して蔵書の検索……。しかし、大堰川事件では一切でてこない。
護岸工事のトラブルなので、護岸工事の日付が分かれば、トラブルの日付もある程度は狭められるはず。そう思い大堰川の歴史みたいなものを検索して、それっぽい本を読んでみるもなかなか見つからない。
途中で飽きたのか、かめじ~ん調査員は「前から興味があったんだよね」とjava scriptに関する本を読み始める。なにしとんねん。
なんとか、なんとか一筋の手がかりでもないか……。
再び、慰霊碑に刻まれた日付や文字に注目する。大正十四年二月二十三日、千本組死没者供養塔。死者は片山組の片山光次……。
ダメもとで「千本組」で蔵書の検索をしてみると……出た!
「千本組始末記: アナキストやくざ笹井末三郎の映画渡世」
これだ!これに違いない!
java scriptの本を読んでいるかめじ~んを呼び、二人でこの本を探索し、見事に発見!
目次を確認してみると、「大堰川の決闘」という見出しが目に入る。本文を読んでみると、亀岡、馬路村、片山光次……見慣れた単語が続々と現れる!
我々が探していたものに違いない!
では、事件が起きたのはいつなのか。本文を読み進める。大正十四年二月二十三日……。
あれ?
慰霊碑に刻まれた日付も大正十四年二月二十三日。
事件が起こった日やったんかーい。
てっきり、慰霊碑が建てられた日付だと思い込んでいた。
最初からその日付で新聞を探していたらこんな手間を取ることもなかったのに……。
とにかく、事件が起こった日付は分かった。もう一度新聞を調べるぞ!
カウンターへ行くと、「また来たよ、この人たち」と思われたか知らないが、先ほどと同じ係員に大正十四年二月二十三日以降のマイクロフィルムを持ってきてもらう。
再度 新聞調査
閲覧用機械にセットして閲覧開始!
二月二十三日。それが事件が起こった日だ。翌日の新聞の記事になるだろうから、掲載されているのは二十四か、二十五か……。
しかしいくら調べても記事は見つからない。なぜだ!
見落としたのだろうか、と二度、三度と読み返すも大堰川のこと千本組のこと、何も書かれていない……。新聞にも書かれないような小さな事件だったのか……。
二十六日、二十七日と、探す範囲を広げるが見つからない。
もうだめなのか……。あきらめかけた時、なんと今まで役立たずだったかめじ~んが一言。
「それ一月やん」
!!!
何度も読み返していた新聞は、なんと一月だった!事件が起きたのは二月なのだ!
そりゃあ見つからないはずだ!
今度は2月分を間違いなくセットして、調べなおす。二月の二十四日……ない。
二十五日……。
あった!
表現が格好いい。隣のニワトリ泥棒も気になるが、見事見つけた!これこそ我々が追い求めていた記事だ!
他にも続報はないかとさらに新聞を繰ってみると、またあった!
恩讐鎬を削る。口丹波の争闘事件
まだ大堰川事件という単語は使われていない。
しかし、続報の記事が載るほどの大きな事件だったということが分かる。にもかかわらず、現在ではだれにも知られていないというのも不思議なものである……。
と、まだすこし新聞を調べるとまたも記事発見!
争闘に使用した銃剣や爆弾
武器を押収した記事だ。ピストルが3丁、ダイナマイト二本なども押収されている。かなりの規模だったのか。その割には死人は少ない?
とまあこれ以降も記事を次々と発見していく。結局二月二十五日から四月分まで探すこととなった。記事が出てくる頻度も少なくなり、これ以上探しても続報はもうないだろうと判断して、ここで打ち切り。
ちなみに、記事を見つけるたびにコピーをしていたが、一枚五十円必要なため、それなりの出費となった少し痛い。
すべての謎が解ける……?
府立図書館では、大正十四年の大堰川事件の新聞記事と、「千本組始末記: アナキストやくざ笹井末三郎の映画渡世」というドキュメンタリの本という収穫があった。
慣れぬ図書館の利用で戸惑うところもあったけれども大収穫である。
この二つの資料を読み解き大堰川事件の真相を明らかにしていくつもりである。
我々は、調査の大いなる収穫に興奮をしつつ、府立図書館を後にするのであった。
結局、4,5時間は図書館にいたことになり、寄っていこうと考えていた平安神宮や美術館、動物園は寄れずじまい、というか興奮して存在自体を忘れていた。
大堰川事件、ついに次回全貌が明らかとなる!……のか?